翻訳あれこれ

第2回:翻訳に役立つ参考書(2)

技術英文のすべて (平野 進編著)  丸善株式会社

非常に良い技術翻訳の学習書・参考書です。内容の豊富さ、充実度の点から言って技術翻訳書として最も優れています。本書は、第一部 序論、第二部 英文の書き方、第三部 研究論文・技術資料の書き方、第四部 特殊技術資料の書き方、 第五部 技術事務に必要な英語の知識 および付録から構成されています。

序論では日本語と英語の差をはじめとして、翻訳をする上で理解しておくべき基本的な事柄が丁寧に記述されます。序論は、ある程度翻訳の経験があり、翻訳の困難さに戸惑っている中級者にとってどのように翻訳 の勉強をすればよいのかについて有効な指針をあたえてくれるはずです。かなり英語力があり、英文和訳なら上級レベルなのに、和文英訳だと全く歯が立たないと戸惑っている翻訳中級者は非常に多いと思います。理由はどこにあるのでしょうか。英語と比較して日本語には主語が欠落する傾向があるとよく言われますが、日本語と英語の差異は主語のあるなしだけではありません。

編著者の平野氏は、理由を丁寧に分析・解説して行きます。和文翻訳に苦労をした人なら、「そーだったのか」と納得のゆく説明がなされています。安直なhow to翻訳教本ではなく、翻訳の本質に根ざした、英語を書く上において重要な指摘に溢れています。

第2部、英文の書き方では技術翻訳に必要な英文法が解説されています。名詞、冠詞、形容詞など、通常の英文法書では分からない翻訳する上で注意すべき点が、詳細に語られます。最近出版されている多くの技術英文法書、技術英語表現集のさきがけといえます。第3部、4部、5部と具体的な資料が続きます。 先にも述べたとおり、上級への入り口で足踏みをしている中級翻訳者が読むべき一冊だと思います。

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