翻訳あれこれ

第5回:翻訳に役立つ参考書(5)

英文翻訳術 (安西徹雄) ちくま学芸文庫

翻訳の基礎的な技術は、分野を問わず共通です。本書は、英文を日本文に翻訳する場合における基本的な翻訳技術について詳しく丁寧に解説しており、文系、理系を問わず翻訳を志す人の必読書です。では、翻訳における基本的技術とはなんでしょうか?
(1) 英文の流れに沿って訳す(つまり、前から順に訳す、後ろから戻って訳さない);
(2) 無生物主語を直訳しない(一般的には副詞句、副詞節に訳す);
(3) 関係代名詞の前で、文章を切る(これは(1)と関連するのですが、後ろから戻って、「するところの」という訳にしない)など、本書には学校での英和訳授業では教えてくれない、英文を日本文に翻訳する際にもっとも必要なテクニックが満載です。

本書は、具体的な例文を使って翻訳技術を一つ一つ詳細に説明するという非常に丁寧な作りになっており、著者の翻訳に対する造詣の深さと相まって学習者に対する愛情あふれる教科書になっています。

本書を使って学習する際には、例文を暗記できる程度まで熟読し、安西氏が提案する翻訳操作の「意味」を理解することが必要です。本書の目的は、読者が訳例を丸暗記することではありません。例えば、(3)の「関係代名詞の前で文章を切る」ことの「意味」を考えることが大切です。なぜ、後ろから戻る訳し方が不都合なのか、関係代名詞とは、そもそもどういう品詞なのか、などを深く考えながら読むことが求められています。本書に加えて、安西氏の翻訳教科書としては「英語の発想」(安西徹雄)、「英文読解術」(安西徹雄)があります。これらの著書もお読みになることをお勧めします。

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