第3回: 技術英文表現辞典 和英編 (小林一未著) インタープレス版 IPC
第4回: 英語の決めて 数量表現 (富井 篤著) インタープレス
初版発行は1971年だから35年以上も前です。本書の特長は一般辞書には記載されていない技術英語の用例を豊富に収集している点です。今では、書店の技術英語コーナーに類書を見つけることは容易ですが、35年前には画期的な辞書だったといえます。PCの無い時代に膨大な量の単語と用例を整理することは大変な作業です。物理的な仕事量の点で、さらに内容の充実という点においても、本書は技術翻訳の辞典・用例集として傑出した書物です。
本書はまず、解説から読むことを推奨します。岡地氏は「1. 翻訳とは何か」で、
「翻訳が上手になるための条件は....... 表現手段である素材を豊富に獲得し、標準基準を身につけること」
と述べています。つまり、英語ならば英米で実際に使われている表現、用例をたくさん覚えることだというのです。
翻訳というのは結局、英和、和英作文(逐語訳)ではなく、英語から日本語、あるいは日本語から英語への文章単位の変換(再表現)だと言えます。
本書は単なるアルファベット順に単語を羅列するのではなく、各単語の用例(実務文書中でどのように使用されているか)という観点から編集されており、英語文章とその 日本語訳が記載されています。一般辞書のように普遍性を目指すのではなく、日本語訳も具体的、実際的です。実際に翻訳をする場合に役立つ表現例が多く、 引用されている英文用例の多くは英米で発行された雑誌などからの引用なので質も高く、日本語訳も現場用語を使ったこなれた表現になっていて翻訳する際に役立 ちます。
英和訳についてもう一言付け加えるならば、著者はいかに翻訳をするかについてこう述べています。
「次のようなテクニックもあります。そしてこれは現在私が意識している唯一のテクニックです。それは『意識の流れは万国共通だから、頭から訳すと自然な訳になる』」ということです。」
英語を前から順に訳してゆくというのは非常に重要なことです。詳細は別の機会に譲りますが、翻訳する場合に守るべき第一の規則です。
本書はそれほど高価ではないので、技術翻訳を志す人にお勧めしたい一冊です。 技術翻訳辞書の歴史の第1ページを飾るにふさわしい優れた辞典・表現例集です。
第2回: 技術英文のすべて (平野 進編著) 丸善株式会社
非常に良い技術翻訳の学習書・参考書です。内容の豊富さ、充実度の点から言って技術翻訳書として最も優れています。本書は、第一部 序論、第二部 英文の書き方、第三部 研究論文・技術資料の書き方、第四部 特殊技術資料の書き方、 第五部 技術事務に必要な英語の知識 および付録から構成されています。
序論では日本語と英語の差をはじめとして、翻訳をする上で理解しておくべき基本的な事柄が丁寧に記述されます。序論は、ある程度翻訳の経験があり、翻訳の困難さに戸惑っている中級者にとってどのように翻訳 の勉強をすればよいのかについて有効な指針をあたえてくれるはずです。かなり英語力があり、英文和訳なら上級レベルなのに、和文英訳だと全く歯が立たないと戸惑っている翻訳中級者は非常に多いと思います。理由はどこにあるのでしょうか。英語と比較して日本語には主語が欠落する傾向があるとよく言われますが、日本語と英語の差異は主語のあるなしだけではありません。
編著者の平野氏は、理由を丁寧に分析・解説して行きます。和文翻訳に苦労をした人なら、「そーだったのか」と納得のゆく説明がなされています。安直なhow to翻訳教本ではなく、翻訳の本質に根ざした、英語を書く上において重要な指摘に溢れています。
第2部、英文の書き方では技術翻訳に必要な英文法が解説されています。名詞、冠詞、形容詞など、通常の英文法書では分からない翻訳する上で注意すべき点が、詳細に語られます。最近出版されている多くの技術英文法書、技術英語表現集のさきがけといえます。第3部、4部、5部と具体的な資料が続きます。 先にも述べたとおり、上級への入り口で足踏みをしている中級翻訳者が読むべき一冊だと思います。
翻訳、特に技術翻訳を学習する上で必要なことは、実際の技術者が現場でどのような英語や日本語を使っているかを覚えることです。つまり、技術英語の専門的なや用語および表現を使いこなせるようになることが求められます。例えば、「当たり」とは何か。「傷」とは?現場で技術者たちが使用しているこれらの用語は、どのような意味であり、英語ではなんと言うのか。さらに「当たりを避ける」という場合の[避ける」という動詞はavoidでよいのか。
こうした、本物の技術英語の用語と表現例を集めたのが本書です。用例が豊富なだけではなく、専門用語に関する具体的な説明もあり、機械や電気関連の技術翻訳を始めるには、必須の文献です。
本書の前身は、工業英語別冊「和英必須用語活用辞典」であり、1975年に出版されています。英文マニュアルの実例が掲載されており、非常に役に立ちます。当時は実際の英語マニュアルが簡単には入手できない時代でしたから、なまの英語マニュアルは貴重な資料でした。「不具合」「切り欠き」「合わせ面」など、技術関連辞書もそれほど多くはない時代でしたから、著者のご苦労がしのばれる労作です。
翻訳をしていて、苦労するのは、専門用語そのものよりも、その単語〔多くの場合は名詞)をどのように使用するのかが分からないことです。 学習辞書では学べない、本物の技術英語が多数収録された本書を利用すれば、プロの翻訳に近づくことができます。
技術翻訳ではビジネスや文化、文学の翻訳と比較して数量表現が多くなりますが、数量を英語で的確に表現することは多くの日本人にとって不得手といえます。数字
、数量を比較したり、以上、以下、平均、四捨五入などを英語で正確に表現するのは非常に難しい作業です。加えて、技術分野では様々な物理量を表現することが求められます。速度、密度、面積、容積、半径、
精度、直径など、「数学が苦手で語学を仕事にしているのに、またまた数学
に悩まされるのか」という翻訳者の愚痴が聞こえてきそうです。こうした物理量の表現も慣れていないとお手上げです。
倍率の比較表現を例にとると、「AはBのX倍」は英語ではどのように表現するのでしょうか。
重さであれば:
The weight of A is three times than of B.
A is three times B in weight.
A is three times heavier than B.
A is three times as heavy as B.
など、times, as ** as, than,あるいはその組み合わせなどが考えられます。
これに具体的な数値が加わると、
The combustion pressures are usually 3.5 to 5 times the compression
pressures.
などとなります。
さらに、「2倍以上」や、「3倍以下」、「4倍程度」、「20倍溶けやすい」など、「30倍光量が増加する」など、複雑な表現が要求されます。
本書はこうした英語の数量表現について、膨大な例を収録しており、技術翻訳に欠かせない1冊です。
「英語の決めて 数量表現」の初版は1980年に発行されています。本書を使用すれば数字、数量をどのように英語で表現するのかが体系的に理解できます。表現辞書として使用する
のもよいでしょうし、技術翻訳のテキストとしてじっくり勉強する
のにも適しています。現在では、「技術英語数量表現辞典」として販売されています。
技術英語では、技術論文の翻訳をする場合に数学や数式に関する表現を理解しておくことが必要になります。
そのような場合には、「基礎からわかる 数・数式と図形の英語」(銀林浩・銀林純)が役立ちます。