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翻訳あれこれ

第6回:翻訳に役立つ参考書(6)

英語の発想 (安西徹雄) ちくま学芸文庫

本書は、前回ご紹介した安西徹雄氏の『英文翻訳術』の姉妹編です。
主として、英文翻訳に関する理論的な側面が説明されています。

本書は、「翻訳の現場からという立場に立って、具体的に翻訳のプロセスを点検し、そこでどんな転換が必要になるかを見ることによって、できればそこから対照言語学的に、日本語と英語の発想の対比を引き出してくること」を狙いとしています。
例えば、『英文翻訳術』では、無生物主語を翻訳する場合に副詞句あるいは副詞節に変換する、という翻訳テクニックが紹介されています。

(a) This road will lead you to the station. (この道は、駅に通じている)
の文章は、
(b) If you take this road, you will get to the station. (この道を行けば、駅に出ます)
と、書き換えることができます。
この構文変換の意味は何でしょうか。
(a) よりも (b) の方が日本語として口語的であるとしても、(a) と (b) はそもそも意味が異なるのではないか。
こうした疑問に答えるのが本書です。
英語と日本語の文章表現における文化的差異(「もの」中心と「こと」中心の考え方)を説明し、翻訳をするうえで英語と日本語の間のこうした差異をどのように克服するのかをわかりやすく説明しています。
英文を日本文へ翻訳する際の要点として

(1) 英語では名詞で書いてあっても、日本語ではこれを動詞に読みほどくほうが自然な訳文となる。
といった優れた提案がなされています。

本書ではこのような、翻訳をする際に役立つ提案について具体例を挙げて詳しく論じています。
結局、翻訳とは学習辞書と文法書を使って逐語的に単語を置き換えてゆく気楽な作業ではなく、二言語文化間での差異を乗り越えるために悪戦苦闘するかなり込み入った作業だということです。
何度も読み返し、本書で説明されている理論とテクニックを身に着けることで、翻訳力が大きく向上するでしょう。